大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26(れ)1426 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人の上告趣意について。

論旨は本件犯行の総てを否認するもので、畢竟事実誤認の主張であり上告適法の

理由とならない。

弁護人竹内佐太郎上告趣意第一点について。

所論は原判決が証拠として採用した第一審における第三回公判調書中の被告人の

供述記載は、不当に長く拘禁された後の供述で証拠能力がないと主張する。

記録によれば被告人は昭和二三年七月二〇日窃盗罪の容疑で逮捕され同月二二日

勾留その後引続き拘束審理進行中昭和二三年一二月二二日検察庁及び裁判所に本件

犯行を認むる旨の上申書を提出し翌二四年一月二一日第三回公判に於て公訴事実の

通り自白の供述をしたものであり、二三年七月二〇日の逮捕以後右上申書提出まで

五箇月余を経過しているのであるが、本件事案は記録に明らかな如く相続問題に絡

む相当複雑な事件であり、その上当初の起訴にかかる窃盗封印破毀被告事件も併存

していたので、右拘禁が必ずしも不当に長いものであるとはいえないのであり、そ

の上記録を精査すると前掲第一審第三回の公判で被告人の自白に関し裁判長は被告

人が長期の拘束に耐えかねて自白するに至つたものではないかを配慮し、その間の

事情につき懇切詳細に尋問しているが(記録四九六丁以下四九八丁)被告人はこれ

に対し然らずして全く任意に自白するに至つたものであると述べ、そして今迄否認

していたことを申訳ないと述べているのである。この尋問の顛末を、直視すれば被

告人の自白が所論のように長期拘禁の結果に基づくものと断することはできない。

尤も被告人は原審においては犯行を否認し一審の自白は保釈を念願する余りなした

ものであると述べているけれども、前叙第一審における裁判長の行き届いた尋問に

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対する被告人の供述に徴して遽かにこれを措信することはできない。然らば仮りに

所論のとおり拘禁が不当に長期に渉るものとしても、右自白と拘禁との間に因果関

係のないことは前段の説明によつて明らかであるから論旨は採用しがたい。(昭和

二二年(れ)第二七一号同二三、六、二三大法廷判決参照)

同第二点について。

論旨は原判決の判示(一)放火予備の事実認定の証拠として、証人Aの検事聴取

書を採用したことを捉へ、同人の供述は架空なもので証拠価値がないのに拘らず、

之を採つて自白の補強証拠としたのは不当であり、従つて原判決はこの事実につい

ては結局被告人の自白のみによつて犯行を認定したことに帰し、刑訴応急措置法第

一〇条三項に違反するのであると主張するのであるが、右は何等の根拠なく独自の

見解に立ち、A証人の証言の証拠力なきことを前提として立論するものであつて採

用に値しない。

よつて刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従い裁判官全員一致の意見を以つ

て主文の通り判決する。

検察官 安平政吉関典

昭和二六年一〇月五日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

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